何度言っても部下が理解してくれない

何度言っても部下が理解してくれない。営業先でいまいち会話が盛り上がらない。皆さんもそんな体験があるのでは? この連載ではコミュニケーション研究家でアップウェブ代表取締役の藤田尚弓が、ビジネスシーンを上手く切り抜ける「最強の話し方」をご紹介していきます。

 第一回は、正しいことを主張しているのに、相手に受け容れてもらえないケース。主張を受け容れてほしいときに心がけるべきなのは、説得より納得です。主張や提案が通りやすくなる「最強の話し方」をご紹介します。

◆まずは否定系の言葉を避けることから

 現実的には難しいA案を主張する上司に、実現可能なB案を採用するよう説得したいとします。皆さんはこんな言い方をしていませんか?

   (よくあるNG例)

   「でも、A案だと納期に間に合いません」

「でも」「しかし」「そうは言っても」といった全文を否定するような接続詞は、心理的な反発を引き出しやすくする要注意ワード。相手を攻撃するつもりがないのであれば、説得のシーンではカットするのがセオリーです。

   (否定形接続詞をカットした例)

http://www.pokersns.jp/diary/34445
http://postmap.org/user/faoweuxnf

   「でも、A案では納期に間に合いません」

       ↓

   「A案では納期に間に合いません」

否定形の接続詞をカットしても意味は十分通じます。さらに否定形のニュアンスを減らす言いまわしに変えてみましょう。

   (否定のニュアンスを減らす言い回しの例)

   「A案では納期に間に合いません」

       ↓

   「納期に間に合わせるためにB案を提案します」

 説得する際、私たちはついつい相手の主張を崩したくなります。しかし否定のニュアンスを全開にしてしまうと、相手が逆に主張を変えにくくなることがあります。否定系の言葉は避け、出来る限り否定のニュアンスを減らす言いまわしを考える。これが説得をする際の第一歩なのです。

◆直接言っていないことも伝わってしまう「含意」

 「交通事故に遭った」と聞くと、私たちはあたりまえのように怪我をした状況を想像してしまいます。事実は「交通事故に遭ったけれど、奇跡的に無傷だった」かも知れませんし、「交通事故に遭ったけれど、病院に運ばれるシーンで夢から覚めた」かも知れません。ところが「交通事故に遭った」というメッセージから、実際には言及していない「怪我をした状態」を想像してしまうのです。このようなことを、含意と言います。

 コミュニケーションでは、実際には言っていないことまで解釈されることがしばしばあります。

 先ほどの否定ニュアンスを少なくした「納期に間に合わせるためにB案を提案します」という言い回しを選んだ場合でも、A案では間に合わせるのが難しいということは暗に伝わります。正面から相手を否定して、ネガティブな感情を向けられる必要はないのです。

 皆さんは無意識に「でも」といった否定形の言葉や、否定のニュアンスの強い言い回しをしていませんか? その場合「職場でチャンスを逃す」「同僚や部下から協力を得にくい」といった損をしている可能性があります。否定系の言葉を意識し、避ける練習を今日からはじめましょう。

◆優秀な人が陥る説明の罠

http://postmap.org/blog/1275386
http://faoweuxnf.on.omisenomikata.jp/diary/1708768

 優秀な人がやってしまいがちな失敗に「説明のし過ぎ」があります。説得したい相手に、主張の意義や背景について説明し過ぎていませんか?

   (説明し過ぎの例)

    「各店舗での節電キャンペーンを提案した背景についてもう少し詳しくご説明します。石油やウランといったエネルギー資源の埋蔵量、増え続ける世界のエネルギー消費量、エネルギー消費による環境問題。どれをとっても現状のままでは大変な結果に繋がることが予測されています。それぞれについてアウトラインを説明しますと……」

 説得対象者が、説明している事柄について知識が少ない場合や自尊心が低い場合では、長い説明が態度変容のきっかけになることもあります。

しかし、説得対象者が説明している事柄について十分な知識がある場合や自尊心が高い場合、逆効果になるリスクがあります。

 同じ職場の上司は、知識があり、自尊心も高い人の典型的な例。 主張を複数の論旨で支えるといった論理的な主張ができる人、事前に情報収集をしっかり行う人など、優秀な人ほど説明し過ぎになりがちなので注意しましょう。

 こういった失敗をしがちな人にぜひ試してほしいのが、説明をコンパクトにして、そのぶん感情面の対処を入れるというやり方です。説得シーンに「なんとなく嫌だ」といった気持ちを解消する要素を取り入れてみませんか?